この記事では通訳と通訳案内士の違いを説明します。私は、職業を人から聞かれた時に、たまに説明するのが面倒くさい時に、「通訳です」と言うことがありますが、実際は通訳と通訳案内士はかなり違います。
仕事内容の違い
通訳の仕事
一般的な通訳のイメージと言うと、首相とかサッカーの監督の後ろについて、同時通訳をする人でしょうか。
通訳は、言われた言葉を正確に聞き取ってそのまま別の言語に訳して他の人に伝えます。シンプルですね。
通訳案内士の仕事
通訳案内士の業務のメインは、観光案内をすることですから、ほとんど自分の言葉で話します。浅草寺が何年に建てられたとか、仏教と神道の違いは何かなど、誰かが言ってそれを訳すのではなく自分の言葉で説明します。何を話すかは決まっていないため、自分で組み立てたストーリーを話す必要があります。
店でお客さんの買い物を手伝う時や、施設見学で施設の人の話す言葉を訳す時は通訳業務をすることもありますが、その頻度は多くありません。
また、大きな違いに、通訳案内士の仕事には、旅程の管理が求められるということがあります。旅程の管理とは、電車やバスの時間に間に合うようにグループの動きをコントロールする仕事です。これは通訳には無い、通訳案内士に特有の仕事ですね。添乗員がやっている仕事と言うと分かりやすいかもしれません。
必要な能力の違い
通訳に必要な能力
通訳は、英語などの語学力が非常に大事です。必要な能力の大半は語学力でしょう。まず、外国語で話す人の言葉が聞き取れなければ始まりませんし、それを瞬時に訳し、日本語で文を作らなければなりません。高い語学力が必要ですね。
単純に外国語の能力が高いだけでなく、日本語力と、日本語に訳す力も必要になります。専門的な訓練を積んだ人でないと厳しいでしょうね。
通訳案内士に必要な能力
通訳案内士は自分の言葉で常に自分の言葉で話してお客さんを楽しませるのが仕事なので、トーク力が必要です。語学力はもちろん必要ですが、話の面白いガイドさんは、当然日本語で話しても面白いです。この、語学力とトーク力というのは全く別の能力ですね。全く外国語を話せなくても日本語で話すのが面白い人はたくさん居ますから。
次に、先ほど述べた旅程管理をする能力が必要になります。旅程管理に必要な能力とは即ち、段取り力と言い換えることができます。ツアー中に次にすることは何かを予め考え、各方面に連絡を取ったりすることが求められるので、そういうのを忘れずにちゃんとやる段取りの上手さのことです。今から行くレストランとかホテルに電話するのって、けっこう忘れるんですよね。
また、特にバスの運転手との関係ですが、他の人と交渉や相談したりして、とにかくお客さんが快適に楽しく旅行できるようにしなければなりません。で、バスの運転手というのがまた、偏屈でコミュニケーションを取るのが難しい人が多いんですね。旅程管理をする能力には、そういう人たちとコミュニケーションをする能力が含まれます。通訳もコミュニケーション力は必要だと思いますが、コミュニケーションの質が違います。
仕事の依頼者の違い
通訳の依頼者
通訳業務を通訳さんに依頼する人というのは、どこかの企業が多いと思います。企業が事業によって、誰かと誰かが外国語で会話することを仲介する必要が生じた時に、通訳は必要とされます。通訳する社員にしろ、フリーランスの通訳にしろ、その原則は変わりません。誰かと誰かのコミュニケーションの仲介が通訳です。
通訳案内士の依頼者
通訳案内士を必要とする人というのは、旅行者です。通訳案内士の仕事は、旅行会社から依頼されることが多いですが、その業務を必要としている人は旅行者です。
そして、旅行者のお客さんさえ見つかれば、通訳案内士の仕事は発生します。よって、魅力的な旅行プランを持っている通訳案内士は、それだけでお客さんを見つけることができます。通訳も、もちろん魅力があればお客さんを得ることができると思いますが、通訳案内士が旅行プランを考えて販売するのとは事情が違うと思います。
私が考える通訳と通訳案内士の違いは、以上のようなものです。名前は似ていますし、仕事の内容も一部は被るのですが、本質的に両者は全然違う仕事だと思いますね。