『通訳ガイドというおしごと』のレビュー

通訳ガイドの仕事内容について理解するには、この本を読むのが最適だと思います。

医者になる方法は、簡単に分かります。医学部に行って医師国家試験に合格すればなれます。

サラリーマンになる方法も分かります。採用面接で合格すれば良いです。

しかし、通訳ガイドになる方法はよく分かりません。資格を取るだけでは仕事が無いですから。

この本『通訳ガイドというおしごと』はその疑問についてかなり詳しく説明してくれている本でした。

私は通訳ガイドの新人研修を受けたことがあります。そこでは、座学で通訳ガイドがどうやって仕事を取るのかの説明もありましたが、この本の内容とほぼ同じでした。この本はかなり密度の濃い情報を提供していると思います。

かと言ってこの本を読んだらガイドの新人研修に行かなくて良いということはありません。新人研修は仲間ができますし、現場でのシミュレーションができますので。

『通訳ガイドというおしごと』は通訳ガイドの仕事について知りたかったら真っ先に買うべき良い本だと思います。

英語で時間を表現する時の言い方

通訳ガイドの仕事では、時間がめちゃくちゃ重要です。集合時間をお客さんに正確に伝えなければなりません。

いつも何度も口頭で説明して、紙に書いてみせています。

お客さんから集合時間を聞き返されることも多いです。で、例えばネイティブの人に

「集合時間は9時50分だよね?」

と聞かれて、これが聞き取れずに苦労しました。非常に恥ずかしい話なんですが、こういう簡単な英語が聞き取れなくて困ることってたくさんあるんです。

ネイティブは9時50分だったら ten to ten とか ten before ten と言います。必ずと言って良いほど。私は今まで自分からこのような時間の表現をしたことがありませんでした。いつも nine fifty と言っておりました。が、ネイティブはそうは言いません。

何故だろうかと思っていたのですが、例えば今は10時10分ですと言いたい時に、

“It`s ten ten.”

と言うと、何のことかよく分からないんですね。ワンテンポ遅れて、ああ時間ね、10時10分ね、ってなるわけです。ネイティブ風に

“It`s ten past ten.”

と言えば時間のことを言っているとすぐに伝わります。また、quarter を使えば、fifteen と言う必要が無くなりますので、fifty とfifteen の聞き間違いを防ぐことができます。

中学校でもこれ式の時間の表現の仕方は習った記憶がありますが、テストでten ten って書いても正解になるので、今までシカトしておりました。なんでそんな分かりにくい言い方するんだろうと思っていたのですが、実際に英語を話してみると、その方が分かりやすいからそちらが一般的な表現なんですね。

9時40分ならば twenty to ten か twenty before ten で、10時20分ならば twenty past ten か twenty after ten となります。この表現の仕方はルールさえ覚えてしまえば難しくありません。でも慣れていない時にいきなり言われると面食らうのでしっかり覚えておく必要があります。

このウェブサイトの説明が非常に分かりやすかったです。図解してあって、ようやく私は覚えられました。時間の表現は苦手だったんですよ。

実際にお客さんに伝える時は、繰り返すと良いと思います。例えば3時15分が集合時間なら

“Our meeting time is three fifteen.  Quarter past three.”

のように、一呼吸おいて別の言い方で時間を言い直すと伝わりやすいと思います。さっそく次のツアーからはこのpastとto式の時間を使ってみます!

『ナチュラル・イングリッシュ』のレビュー

プロの通訳ガイドになるにあたり、丁寧な英語を身につけようと思い、いくつか本を買いました。

日本語は敬語が複雑な言語なので、基本的な日本語を覚えただけでは、大人がビジネスで話すような日本語を話すことはできません。覚えたての日本語では、失礼な言葉を話してしまう危険性があると思います。 それと同じことを、私が英語を話す時にやってしまうのではないかと思い、この勉強を始めました。 かなり勉強になった本を紹介します。

ナチュラル・イングリッシュ

80年代に書かれた本です。世の中はグローバル化し、テクノロジーも発達してオンライン英会話教室もできました。日本人の英語力は、この30年で飛躍的に上昇したはずです。 にも関わらず、この本に書かれていることは、今の日本人が話してしまいがちな、不自然な英語を指摘しています。

特に分かりやすく、即座に使える便利だった章は、日本人が使いすぎな英語表現と、ネイティブがたくさん使うのに日本人があまり使ってない表現をまとめた章です。これには、そういうことか!と納得の連続でした。

例を挙げます。まず、日本人が使いすぎの単語です。

diligent 「勤勉な」という意味は、works very hard や a hard workerと表現されることが多い。

member 特に組織の一員という意味を強調しないならば、person という言葉で良い。memberという単語は、チ○コを遠回しに言う単語でもあるため要注意。

scold 叱るという意味で使いがちだが、一般的には「叱る」はtell off などと表現される。

enter 入るという意味でよく使ってしまうが、堅苦しい感じがするのであまり使われない。入る、ならcome in などが一般的。

will 未来のことを言うときに頻繁に使ってしまうが、~ing やgoing to ~、または単に現在形など、未来を表現するには様々な語彙があって、それぞれ意味が違うからwillで代用できるわけではない。

さて、次はネイティブがよく使うけど日本人があまり使わない表現です。

so far 今まで、という意味を言うとき、until now と言ってしまいがちだが、so farの方が自然である。(もちろん、使い分ける必要はある)

rather 副詞として、a little の意味や 時にはextremely という意味でも、幅広く使われる。

chicken feathersなど、いわゆる複合名詞 ネイティブは割と複合名詞を使って何かを表現するらしいです。複合名詞と言えばTOEICのPart 5で要注意ですね。

さて、使いすぎと使用不足を紹介しましたが、心当たりがあるのではないかと思います。特に、未来を表すwill なんかは、中学生の時に学校のテストで、未来のことを書く問題は全部will を使えば正解だったため、will をよく使う癖が付いていました。また、そもそも中学校ではwill とgoing to は意味が同じだと習いました。これは学校英語の弊害ですね。

全体を通してこの本は、30年前に書かれたと思えない、鋭い指摘がたくさんの良書でした。英語を仕事で使い始める人などに特にオススメです!

読心術でリスニング力の無さをカバーする

通訳ガイドの仕事をしていて困るのは、お客さんの英語を聞き取れないことです。

プロなのにこんなことを言ってしまって恥ずかしいのですが、お客さんの英語が聞き取れないことはよくあります。

お客さんは色んな英語を話します。インド英語だったりオーストラリア英語だったりイギリス英語だったり。いつもアメリカ人の英語で勉強してきた人にとってはかなり聞き取りづらい英語を話すお客さんも居ます。

そしてむしろ、早口で話すアメリカ人の英語が相当に難しいです。彼らにとっては普通のスピードなんでしょうけど、非ネイティブにとっては難しいです。でもこちらはプロなので、ゆっくりしゃべってと言いにくいし、何度も聞き返すのも悪いので、困りますね。

そんな時に私がよくやるのが、相手が言ったことを予想し、こちらの言葉で聞き返すというテクニックです。

何かセンテンスで話しかけられた時に、1単語、特徴的な言葉だけ聞き取れるのはよくあることです。例えばホテルにチェックインした時の会話で、breakfastという単語が聞き取れたら、だいたい朝食の場所か時間です。

“Are you asking breakfast time?”

と聞き返して、実は時間ではなく場所が知りたければ、相手がそのように聞き直してくるでしょう。

これは、お金が絡む状況では非常に大事なことです。自分が理解した内容を、それで良いかと聞くのは非常に大事ですね。別にふだん日本語で話していても確認することは大事なので、おかしいことではありません。

たまに、ほぼ聞き取れなかった時に、完全に相手の言ったことを想像して聞き返すことがあります。当たっていればそのまま会話が続行しますし、外れていれば相手が訂正してくれます。英語のリスニングというよりむしろ読心術ですね。

これは、仕事の経験が増えれば相手が聞きたいことも段々と分かってくるので精度が上がります。

参考:外国人のお客さんによく聞かれる質問ベスト3

プロならば英語のリスニング力を上げる必要があるのは言うまでもありませんが、ただ、聞き取れない時は相手が言いたいことを考えて確認を取るというのは大事なことだと思います。リスニングで苦戦している方は、是非このテクニックを試してみてください。

外国人のお客さんによく聞かれる質問ベスト3

通訳ガイドの仕事をしていると、お客さんから色々なことを質問されます。質問をしてくれればお客さんが知りたいことが分かりますから、大歓迎ですね。

突飛なことを聞かれて困ることもよくありますが、よく聞かれる質問というのはだいたい決まっています。ベスト3を挙げると、

第3位

日本人はどうして英語を話す人が少ないの?

これは、英語が話せないことが当たり前で話せるのが凄いという前提で生きている我々にとって衝撃的な質問ですね。たぶん、英語のネイティブスピーカーにとって、英語は世界共通語だからみんな話せるはず、ということでしょう。ヨーロッパの国では普通に英語が通じるもので、日本もそれと比べているのかもしれません。

私は、日本では学校の授業で英語の話し方を勉強しないからだと答えています。読み書き、文法の授業が多いので英語が読み書きできる日本人は多いけど、我々のか学校のカリキュラムには会話の授業が足りないんだと説明します。話題を更に膨らませるなら、大学入試の英語が読み書きのテストで高校生はみんなそれに向けて勉強していて、英会話の練習はしないと付け加えます。

第2位

日本の公道にはなぜゴミ箱が無いの?

これは、日本に暮らしていては気付きませんでした。確かに道にゴミ箱がありませんね。旅行者にとっては不便だと思います。外国では公道にゴミ箱があるんでしょうかね。

この理由は、オウム真理教事件でサリンをゴミ箱に入れられたことがあったそうで、それからテロ対策としてゴミ箱が撤去されたと聞いたことがあります。私もお客さんにそう答えています。

でもこれは仮説で、本当のところは何故ゴミ箱が無いのかよく分かりませんね。自分で出したゴミは自分で捨てろということでしょうかね。

第1位

日本人はなぜマスクをしているの?

これが最もよく聞かれる質問です。ほぼ毎回のように誰かが私に聞きます。相当おかしいんでしょうね。

これには理由が3つあると答えています。

風邪対策と、花粉症対策、女の子がすっぴんを隠すため、と答えています。3つ目の理由は彼らにとって面白いようです。さらに強引に話を膨らませると、源氏物語の時代、女性は公に顔を出さなかったので日本には女性が顔を隠す文化が残っていると言っても良いかもしれません。女性の化粧が独特の進化を遂げていることとも関係があるかもしれません。

他には顔を隠すと安心する人とか、喋ったり歌ったりする仕事の人は喉を保湿するためにマスクをするとか、理由はたくさん出てきますね。特に、ガイドである私自身、喉の保護のためにマスクをすることが多いので、実感を込めて話せます。

こんなに色々用途があってマスクは便利なので、外国人もしたら良いと思うんですがね。欧米の国でマスクをしていたら、ちょっとヤバい雰囲気が出てしまうようです。

「マスクしてるのは強盗ぐらいだよ」

とオーストラリア人に言われたことがあります。イギリス人の友達にも、マスクはおかしいと言われたことがあります。風邪のウィルスは小さいからマスクの繊維の穴では防げないから風邪予防の意味もないと彼は言っていました。

でも実際、医学的にマスクは風邪予防になるとは言えるようです。口周りの湿度を上げることでウィルスの働きを弱らせる効果があるようです。

英語、ゴミ箱、マスクはよく聞かれることですが、特に欧米人にとって日本という国は不思議に映るようです。他にはなぜ切腹をするのかとかも聞かれますね。あと、植物の名前もめちゃめちゃよく聞かれます。これは本当に苦手で、一度本気で勉強をしないといけないなぁと思っております。植物の名前でも聞かれて答えられないと、「このガイドは知識が少ない」と思われてしまいますからね。

逆に、私から見たらアメリカは不思議の国です。質問する機会があったら、何故アメリカ人は銃を持っているのかとか、何故パーティーをよく開くのかとか、進化論を信じてないのかとか聞いてみたいですね。ゴリゴリのステレオタイプの質問なので、そんなのケース・バイ・ケースだと答えられるでしょうが、まあそういうことが気になるのはお互い様だと思うので、気さくに教えて欲しいところですね。