『秋葉原 裏の歩き方』のレビュー 

昨今の訪日旅行ブームで東京のインバウンドビジネスは過熱しています。どこもかしこも外国人を取り込めとばかりに商売してる感がありますね。

秋葉原はその中心にあるような街で、やはり日本のオタク産業は世界で人気がありますから、今や訪日外国人の街になったとも言えます。秋葉原に来る外国人はだいたい自分でネットでいろいろ調べてくるので、我々通訳案内士と一緒に回ることはあまり多くありませんが、とはいえ秋葉原を通訳案内士が案内する機会は少なくありません。

通訳案内士は年配の人が多いので、秋葉原のオタク文化と縁が遠く、秋葉原の案内に苦手意識を持っている人が多いです。また女性が多いので、秋葉原のオタク文化を嫌っている人さえいます。エロゲキャラの宣伝が堂々と街中に溢れている街を、日本の恥だと思っているのでしょう。

私はそういうガイドと比べるとかなり秋葉原には詳しいのですが、それでも、案内するとなると、そのために、秋葉原の基本的な情報から裏情報まで、一旦整理し直す必要があると感じていました。

と、前置きが長くなりましたが、そのために買ったこの本はかなり良かったです。

ラジオ会館、らしんばん、まんだらけ等の、アニメマンガゲームのグッズが一通り手に入る店の紹介から、スーパーポテトやリバティ4号館等のレアものを扱った店の紹介、という基本的な情報から、メイドリフレや洗体等、風俗に近い物の体験レポートや、地下アイドルにセフレが居るといった裏っぽい情報も書かれています。

私が通訳案内士としてこの本が良いと思ったのは、秋葉原の歴史についてもまとめられている点でした。戦後に神田で電子部品を扱う闇市が発生し、それが秋葉原に移ってラジオ会館やラジオデパートなどができ、90年代はPCパーツの店が増え、00年代はアニメやゲーム等のオタク産業の街になりました。さらに、2010年代の秋葉原は、すっかり訪日外国人向けの店が増えて、歩いている人の中でもかなり外国人が目立つようになりました。秋葉原は常に変化する街なのです。と、いうような秋葉原の歴史についても、ガイドが話すネタとして充分に書かれていて大変ありがたかったです。

総じて、この本は著者の凄い熱量によって書かれていて、情報も文章も惹きつけるものがあります。特に、本で読んだ話をまとめたのではなくて、著者自身が足を使って調べた情報、すなわち一次情報が書かれた本なので書いてあることにかなり価値があります。

秋葉原のことを何も知らないのに人を案内することになってしまった通訳案内士にも、私のようにそこそこ秋葉原のことを知っている人にもオススメできる素晴らしい本でした。著者のにゃるらさんはかなり若い人なので、よくこんなこと調べたな、と思いますね。

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